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福岡地方裁判所 平成5年(わ)859号 判決

本店の所在地

北九州市小倉北区京町一丁目六番二号

法人の名称

株式会社 綜合レジャー開発

代表者の住居

北九州市小倉南区大字横代二三五番地の二九

代表者の氏名

山本秀隆

代理人の住居

北九州市小倉南区大字呼野一七九番地

代理人の氏名

北埜延繁

本店の所在地

北九州市小倉北区京町一丁目六番二号

法人の名称

有限会社 南日本レジャー企画

代表者の住居

北九州市小倉南区大字呼野一七九番地

代表人の氏名

北埜延繁

本店の所在地

北九州市小倉北区京町一丁目六番二号

法人の名称

有限会社 中国レジャー開発

代表者の住居

広島市西区庚午中三丁目五番一五-四〇三号

代表者の氏名

西森恵

代理人の住居

北九州市小倉南区大字呼野一七九番地

代理人の氏名

北埜延繁

本籍

北九州市小倉北区大門一丁目三番

住居

同市小倉北区小文字一丁目二番一〇号

職業

会社役員 豊田徹男

昭和一二年九月二九日生

本籍

福岡県築上郡椎田町大字有安一〇七番地

住居

北九州市門司区大里原町四番二三号

職業

無職(元税理士) 野入俊英

昭和三年一月一日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官飯倉立也出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社株式会社綜合レジャー開発を罰金一八〇〇万円に、同有限会社南日本レジャー企画を罰金四〇〇万円に、同有限会社中国レジャー開発を罰金七五〇万円に処する。

被告人豊田徹男及び同野入俊英をそれぞれ懲役一年六月に処する。

被告人豊田徹男及び被告人野入俊英に対し、この裁判確定の日から四年間それぞれ右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社株式会社綜合レジャー開発、同有限会社南日本レジャー企画及び同中国レジャー開発は、いずれも北九州市小倉北区京町一丁目六番二号に本店を置き、テレホンクラブ等の経営を業とするものであり、被告人豊田徹男は、右各会社の実質的経営者(被告会社株式会社綜合レジャー開発については、平成元年四月七日から同四年六月三〇日まで代表取締役)としてそれらの業務全般を統括しているものであり、同野入俊英は、右各会社の関与税理士として、それらの税務書類の作成等を行っていたものであるが、被告人豊田徹男及び同野入俊英の両名は、共謀の上、右各会社の法人税を免れようと企て、右各会社の業務に関し、売上を除外し、それによって得た資金を被告人豊田徹男の親族名義で定期預金するなどの方法により各会社の所得を秘匿した上

第一

一  平成元年四月七日から同二年三月三一日までの事業年度における被告会社株式会社綜合レジャー開発の実際所得金額が一億二五二五万五六一六円(別紙一の1ないし3の修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同二年五月三一日、北九州市小倉北区萩崎町一番一〇号所在の所轄小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一二三六万四二二七円で、これに対する法人税額が三九四万九五〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額四九一〇万五九〇〇円と申告税額との差額四五一五万六四〇〇円(別紙二の1の脱税額計算書参照)を免れ

二  同二年四月一日から同三年三月三一日までの事業年度における被告会社株式会社綜合レジャー開発の実際所得金額が四三九六万〇二〇五円(別紙一の4ないし6の修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同三年五月三一日、前記小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一一一八万八一三九円で、これに対する法人税額が三二九万九四〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額一五五八万八九〇〇円と申告税額との差額一二二八万九五〇〇円(別紙二の2の脱税額計算書参照)を免れ

三  同三年四月一日から同四年三月三一日までの事業年度における被告会社株式会社綜合レジャー開発の実際所得金額が五〇五四万五五二八円(別紙一の7ないし10の修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同四年六月一日、前記小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四九〇万一一三三円でこれに対する法人税額が一二〇万八五〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額一八〇三万〇六〇〇円と申告税額との差額一六八二万二一〇〇円(別紙二の3の脱税額計算書参照)を免れ

第二

一  平成元年四月七日から同二年三月三一日までの事業年度における被告会社有限会社南日本レジャー企画の実際所得金額が二五一四万七四二九円(別紙一の11ないし13の修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同二年五月三一日、前記小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四七四万五四二九円で、これに対する法人税額が一三〇万五〇〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額九一〇万七七〇〇円と申告税額との差額七八〇万二七〇〇円(別紙二の4の脱税額計算書参照)を免れ

二  同二年四月一日から同三年三月三一日までの事業年度における被告会社有限会社南日本レジャー企画の実際所得金額が一三三九万三六二一円(別紙一の14ないし16の修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同三年五月三一日、前記小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四二六万〇一二一円で、これに対する法人税額が、一一一万九〇〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額四一八万八五〇〇円と申告税額との差額三〇六万九五〇〇円(別紙二の5の脱税額計算書参照)を免れ

三  同三年四月一日から同四年三月三一日までの事業年度における被告会社有限会社南日本レジャー企画の実際所得金額が一七八三万一二七三円(別紙一の17ないし19の修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同四年六月一日、前記小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五六八万三五七三円で、これに対する法人税額が一五一万八五〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額五八五万三九〇〇円と申告税額との差額四三三万五四〇〇円(別紙二の6の脱税額計算書参照)を免れ

第三

一  平成元年四月七日から同二年三月三一日までの事業年度における被告会社有限会社中国レジャー開発の実際所得金額が二八〇五万一〇〇二円(別紙一の20ないし22の修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同二年五月三一日、前記小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一三七万〇〇〇二円で、これに対する法人税額が三九万七三〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額一〇三四万〇四〇〇円と申告税額との差額九九四万三一〇〇円(別紙二の7の脱税額計算書参照)を免れ

二  同二年四月一日から同三年三月三一日までの事業年度における被告会社有限会社中国レジャー開発の実際所得金額が二一七三万五一五〇円(別紙一の23ないし25の修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同三年五月三一日、前記小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一八二万二〇五〇円で、これに対する法人税額が五〇万五六〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額七三八万六一〇〇円と申告税額との差額六八八万〇五〇〇円(別紙二の8の脱税額計算書参照)を免れ

三  同三年四月一日から同四年三月三一日までの事業年度における被告会社有限会社中国レジャー開発の実際所得金額が二五四四万〇四七二円(別紙一の26ないし28の修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同四年六月一日、前記小倉税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二三四万六五七二円で、これに対する法人税額が五三万三三〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額八六五万六四〇〇円と申告税額との差額八一二万三一〇〇円(別紙二の9の脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)(かっこ内は検察官請求証拠番号の略である)

判示事実全部について

一 被告人野入俊英の当公判廷における供述

一 第一、二回公判調書中の被告人豊田徹男の供述部分

一 第一、三回公判調書中の被告人野入俊英の供述部分

一 被告会社南日本レジャー企画代表者北埜延繁の当公判廷における供述

一 第一回公判調書中の被告会社綜合レジャー開発代表者山本秀及び同中国レジャー開発代表者西森恵の各供述部分

一 被告人豊田徹男(一一通、乙2ないし12、乙6、7、9及び12は被告人豊田につき)及び同野入俊英(八通、乙16ないし21、23及び25、乙は16は被告人野入につき)の検察官に対する各供述調書

一 被告会社南日本レジャー企画代表者北埜延繁(二通、乙28、29、乙29は被告人野入については一ないし二六、二八ないし三一項及び別紙)及び同中国レジャー開発代表者西森恵(乙30)の検察官に対する各供述調書

一 高塚清章(甲16)、山本秀隆(甲18、但し被告人野入については一項、二項及び別紙)、高辻知恵美(甲19)、後藤俊博(甲20)、堀江達哉(甲23、被告人野入については一ないし四、九項及び別紙)、豊田住子(甲24、被告人豊田につき)、野入英子(三通、甲28ないし30、甲28、29は被告人野入につき)、竹田圭子(甲31)、落丸栄子(甲32)の検察官に対する各供述調書

一 査察官報告書(甲27、被告人野入は除く)

一 検察官作成の捜査報告書(甲26)

一 検察官作成の電話聴取書(甲25)

判示第一の一、二、第二の一、二及び第三の一、二の各事実について

一 高塚清章の検察官に対する供述調書(甲17)

判示第一の二、三、第二の二、三及び第三の二、三の各事実について

一 被告人野入俊英の検察官に対する供述調書(乙22)

判示第一の一、二、三の各事実について

一 査察官調査書(甲1、2、6)

一 岩崎竜次の検察官に対する供述調書(甲21)

判示第一の一、三の各事実について

一 査察官調査書(甲9)

判示第一の二、三の各事実について

一 査察官調査書(甲8、10)

判示第一の一の事実について

一 被告人野入俊英の検察官に対する供述調書(乙24)

一 査察官調査書(甲3、5)

一 押収してある法人税確定申告書一綴(平成五年押第二一八号の1、甲34)

判示第一の二の事実について

一 押収してある法人税確定申告書一綴(同年押同号の2、甲35)

判示第一の三の事実について

一 査察官調査書(甲4、7)

一 押収してある法人税確定申告書一綴(同年押同号の3、甲36)

判示第二の一、二、三の各事実について

一 査察官調査書(甲11)

一 福村精次の検察官に対する供述調書(甲22)

判示第二の二、三の各事実について

一 査察官調査書(甲13)

判示第二の一の事実について

一 押収してある法人税確定申告書一綴(同年押同号の4、甲37)

判示第二の二の事実について

一 査察官調査書(甲12)

一 押収してある法人税確定申告書一綴(同年押同号の5、甲38)

判示第二の三の事実について

一 押収してある法人税確定申告書一綴(同年押同号の6、甲39)

判示第三の一、二、三の各事実について

一 査察官調査書(甲14)

判示第三の二、三の各事実について

一 査察官調査書(甲15)

判示第三の一の事実について

一 押収してある法人税確定申告書一綴(同年押同号の7、甲40)

判示第三の二の事実について

一 査察官調査書(甲12)

一 押収してある法人税確定申告書一綴(同年押同号の8、甲41)

判示第三の三の事実について

一 押収してある法人税確定申告書一綴(同年押同号の9、甲42)

(法令の適用)

罰条

判示第一の各事実について

被告人豊田徹男 法人税法一五九条一項、二項、刑法六〇条

被告人野入俊英 法人税法一五九条一項、二項、刑法六〇条

被告会社株式会社綜合レジャー開発 法人税法一六四条一項

同法一五九条一項、二項

判示第二の各事実について

被告人豊田徹男 法人税法一五九条一項、二項、刑法六〇条

被告人野入俊英 法人税法一五九条一項、二項、刑法六〇条

被告会社有限会社南日本レジャー企画 法人税法一六四条一項

同法一五九条一項、二項

判示第三の各事実について

被告人豊田徹男 法人税法一五九条一項、二項、刑法六〇条

被告人野入俊英 法人税法一五九条一項、二項、刑法六〇条

被告会社有限会社中国レジャー開発 法人税法一六四条一項

同法一五九条一項、二項

刑種の選択(被告人豊田徹男及び同野入俊英)

判示各罪につきいずれも懲役刑選択

併合罪の処理

被告人豊田徹男につき 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の一の罪の刑に加重)

被告人野入俊英につき 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情き最も重い判示第一の一の罪の刑に加重)

被告会社株式会社綜合レジャー開発につき 刑法四五条前段、四八条二項

被告会社有限会社南日本レジャー企画につき 刑法四五条前段、四八条二項

被告会社有限会社中国レジャー開発につき 刑法四五条前段、四八条二項

刑の執行猶予(被告人豊田徹男及び同野入俊英) 刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、被告会社三社の実質的経営者としてテレホンクラブ数店舗等を営む被告人豊田が、顧問税理士の被告人野入と共謀して、売上を除外する方法により、右各被告会社の法人税三期分合計一億一四四二万二三〇〇円の脱税をした事案であるが、国民の当然の義務である納税義務を免れることが違法性の高い行為であることはもとより、本件ほ脱税額は巨額で、ほ脱率も三社で約九〇パーセントという高率なものであることに鑑みると、各被告会社及び被告人らの刑事責任は重大であるといわなければならない。

被告人豊田は、納税意識が乏しく、個人経営時代から虚偽の脱税申告により脱税を続けていたところ、昭和六三年に申告手続を依頼していた知人が死亡したことから、脱税の補助者を探す必要に迫られて、被告人野入を顧問税理士に迎え入れ、その助言で被告会社三社を設立した上、売上除外の方法により脱税を実行していたものであるが、その動機は、個人的な蓄財を図り、テレホンクラブの衰退に備えて新事業の開業資金を確保しておく等私利私欲に基づくものであって、酌むべき点は見い出しがたく、その犯情は悪質である。また、被告人野入は、二〇年以上大蔵事務官として税務署に勤務した後、税理士として活動していたものであるが、多額の保証債務を負いその支払いに窮したことなどから被告人豊田の脱税の意図を知って高額の報酬約束の下に顧問税理士となり、税務の専門家として適正な税務申告がなされるように指導監督するどころか、法人化後の脱税方法として売上伝票を抜いて処分することなどの具体的なアドバイスをした上、虚偽の確定申告書を作成していたもので、とりわけ、平成二年度の途中からは自ら売上伝票の抜き取り、虚偽の売上集計表の作成を行うようになったほか、顧問料、決算報酬以外に相当高額な裏報酬を被告人豊田に要求して、これを受け取っていた疑いが濃厚であり、税務に関する専門家にあるまじき不行跡の数々に徴すると、その犯情は悪質であり、税理士に対する社会的信用を失墜させたという意味でもその責任は一層重いものといわざるをえない。

他方、被告会社三社は修正申告をした上、被告会社綜合レジャー開発は、本税及び加算税である一億一七三一万四九〇〇円につき平成六年三月三一日から毎月末日限り一〇〇万円を、被告会社南日本レジャー企画は、本税及び加算税である四七一六万七二〇〇円につき平成六年三月三一日から毎月末日限り五〇万円を、被告会社中国レジャー開発は、本税及び加算税である二八三三万三七〇〇円につき平成六年三月三一日から毎月末日限り五〇万円を支払う旨の納付計画書を提出し、これに相当する約束手形を振出交付して、現在まで遅延なくその支払いを実行しており、また、被告会社綜合レジャー開発は、その所有不動産の売却により五五〇万円を、加算税に充当しており、今後も右支払いが履行される見通しがあること、被告会社ではこれまでのずさんな経理関係を改め、新たな税理士の起用による可視的な経営体制が確立されたこと、被告人豊田は、右のとおり、被告会社の体制を一新し、加算税等の今後の支払いを確約するなど、反省の情を示していること、被告人野入においては、税理士会から退会せざるをえなくなったことにより、既にある程度の社会的制裁を受けていると考えられることなど被告人に有利な事情も存する。

これらの各被告会社及び被告人らにとって有利不利な一切の事情を総合考慮して主文のとおり刑の量定をした。

(裁判長裁判官 仲家暢彦 裁判官 冨田一彦 裁判官 野島久美子)

修正損益計算書

〈省略〉

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